引き続きカルネ村が着々と戦力を増強しているところが描写される。ナザリックも遠巻きに観察しているだけではなくルプスレギナ・ベータを派遣して随時援助を与えており、原則として自助努力に任せているもののオーガが村に参加すればゴーレムにオーガの住居を建設させるなど思った以上に手厚い支援を続けていた。
森の異変はアインズが森の賢王を連れ去り建物を建築したのが原因なので、そこに関してはマッチポンプ感がある。救助されたアーグ達はこのまま村のゴブリンのグループに加わるんだろうか。自然の中で暮らしていた一般ゴブリンと召還された戦闘用ゴブリンでは文化も相当違ってそうだけど、生き残るために一緒に戦わなければいけない状況下では些細な問題か。
エンリが町に到着すると身分を怪しまれ拘束される。このとき尋問を担当する魔法使いがとんでもなく優秀で、物語上の都合なのは分かるけどエンリのマジックアイテムをやたら名調子で正確に分析してのける。何者なんだ一体。複数のゴブリンを召還できるアイテムを町に持ち込もうとすればテロリストの容疑をかけられても仕方なく、話の立場的にはエンリの邪魔をする敵役なのに客観的にはその判断は一切間違ってないというのが面白い。あわや御用となったときモモンが現れエンリの保証人となったところ、一転してエンリは名士のように扱われるようになった。状況がくるくる変わって楽しい。
そしてついにエンリが村長に担ぎ上げられる。素早い判断を求められる非常時に軍事と政治のトップを統一するのはよくある話だし、そもそもエンリはか弱い女性というジャンルではない。見た目には分からないけど前回の筋肉アピール、今回は数人分の武器をまとめて軽々と抱え上げるなど力持ち属性もあって、指揮官としてだけでなく直接の戦闘でもいずれ活躍することを期待できる。登場したときは妹を守る姉でしかなかったのに意外な才能が開花したものだ。陰から色々とお膳立てされているもののエンリは終始本当に頑張ってるのでナザリックに甘やかされてるとは感じないし、締めのルプスレギナの不穏な様子を見るとナザリックにしてみればカルネ村は利用する対象でしかない。そういう押したあと引くみたいなバランス感覚がこの作品にはある。ナザリックの露出が少なく戦闘もない回なのに、内容の濃い話だった。
ひっそりと何やかんや