今年のアニメを語り始める前に、去年についてざっくり感想を書いていく。もうだいぶ記憶の整理が進んでいて、たぶん今がこれを書ける最後のタイミング。
2017年冬 1~3月 けものフレンズ
けものフレンズについては自分もよくいる1話切り勢の一人。「あははは!うふふふ!あーはー!」で切ってるんだから早すぎる。後にシーンが盛り上がっていることを伝え聞いて最終回直前の11話一挙放送から再参入。1話ラストの紙飛行機で心を掴まれた。
社会から切り離された場所で、動物の一種としての人間の価値を問うというのがシリーズとしての枠組みだが、作品としての魅力はむしろ登場人物が皆与えられた状況下で正直に、誠実に、協力し合う生き様にあった。
この作品は最初にシナリオ決定稿が出来てからそれに沿って作り始めたのではなく、たつき監督とスタッフが作り進めながら前の方も修正するという風に全体を徐々に組み上げていったという。結果的に1話には伏線がありったけ詰め込まれ、終盤それが解けていく様は圧巻だった。
従来のアニメとは大幅に異なる少数精鋭の製作体制で作られた結果、たつき監督の作家性が隅々まで行き渡った作品に仕上がり、それが強力なフォロワーを生んだように思う。自分もまた放映後もコミュニティに入り浸っていた。
その後たつき監督の降板から始まる騒ぎは長く続き、降板は覆らないことが12月に確定し、きっちり1年で一つの終わりを迎えてしまったのは偶然とは言え悪い意味で出来すぎだった。もうコミュニティは見ていない。新作のアプリも期待外れで、せめて旧アプリが復活すればまだ延命したかも知れないが言っても仕方ない。
これを機にヤオヨロズ制作の過去作をちょっとつまんでみたが、どの作品もアドリブタイムを設けて声優を素に戻らせるというバラエティ番組風の仕掛けがあって、それがたまらなく嫌でどれも1話たりとも見通すことができなかった。
前年までアニメから遠ざかっていたが、この作品で改めてアニメをちゃんと見てみようという気になって4月から色々手を出すことになる。
2017年春 4~6月 サクラダリセット 他
サクラダリセット
最後の場面から逆算して書かれたかのような、全ての能力が結末へ収束していく構成力は原作小説の力だろう。7巻に及ぶ原作小説を語るには2クールでも足りず、原作未読である自分にも展開が駆け足なのは見て取れた。
主人公が淡白すぎて感情移入できないというのがこの作品へのよくある批判だが、叫んだ勢いでパワーアップみたいな脳死展開に飽きた身には主人公の慎重で冷静であろうという姿勢はとても好ましかった。偶然だが前期のけものフレンズ同様この作品に悪人はたぶん一人もいないし、大半の人物は能力を社会に役立てようとする過程で互いに衝突していく。
たまに投入してくる萌え要素もなかなか貴重で、不器用で考えすぎな春埼の行動は愛おしい。
進撃の巨人 2期
2期は物語が大きな展開を見せ、毎回が緊張の連続だった。作画の迫力も大したもの。なのになぜか1期より評価を下げている勢力が一定数いて、彼らには何が見えているのか不思議。最近原作でやったユミルの過去話を前倒しでこの2期でやったところが印象深い。原作者の諫山創自身がアニメ脚本の構成に深く関わっており「アニメが完成版。漫画で演出ミスった部分や伏線を張りなおすようにしてある」と発言しているので、この構成が本来なんだと思って観ている。
正解するカド
盛り上がる期待感としぼむ残念感に終始した作品。最初のうちはカドはとんでもない存在なんだ!というだけの描写が延々続く。中盤から人類の意識を変容させるギミックが登場して、あれ、本気のSFをやるつもりか?と思わせて結局それは全部無かったことになる。最後は駆け足で、あの人物がザシュニナを越える存在となった理由もろくに説明できないまま。漫画っぽい顔をCGでちゃんと動かせるところは良かった。
ラブ米 -WE LOVE RICE-
ヤオヨロズの過去作はアドリブの楽屋落ちを挟む仕組みがあって見ていられなかったが、この作品はそういうのを廃してしっかり作り込む系なので大丈夫だった。何もかも米に絡めて全力でボケ倒す作風はニコニコ動画の突っ込みコメントと相性がいい。10月から2期も放映された。
Re:CREATORS
金と手間隙をかけて作ってる感が伝わってきたので視聴を続けたが、当初から感じていた発想の平凡さは2クールの間そのままで、物語は最後まで予想を越えることなくふわっと着地した。トリックやどんでん返しなど、「そう来るか!」と感心する瞬間がこの作品で訪れることは一度もなかった。作画は高水準なだけに勿体無い話。最愛の人を救うために新たな世界を創造する百合エンドは好き。
恋愛暴君
暴力系ラブコメの割に意外と古臭い感じはしないが、その理由はうまく説明できない。樒以外は基本的に良い子達だし、暴力のための暴力という感じでもないためかも知れない。恋愛には元々暴力的な要素があり、それを極端に強調した作品とは言えそう。スピーディな演出が楽しかった。
2017年夏 7~9月 メイドインアビス 他
メイドインアビス
このクールで最も熱く心を揺さぶる物語だった。架空の世界の見たこともない風景を丹念に描写していくのを見ているだけで楽しい。階層ごとに大幅に変わる生物相、上昇負荷という制約により降りていくしかない一方通行性、容赦ない残虐展開とそれを乗り越えていく決意。最初のうちは生き物こえーと思いながら見ているのが、そのうち探掘家おかしいよになっていく。2期が待ち遠しい。
異世界はスマートフォンとともに。
転生ジャンルの極北。問題が提示されると次のカットで解決という感じの勢いで物語が進んでいく。最初から持ち物をコンプリートした状態でお使いクエストを消化するような苦労の無さ。評価は低く視聴者からは馬鹿にされる番組で「スマホ太郎」という蔑称まで付けられたが、自分はこの一切引っかかりのないスピード感が楽しくてずっと見ていた。スマホ太郎という名前もむしろ言い得て妙で、これはファンタジーというより童話・寓話に近い匂いがする。
プリンセス・プリンシパル
架空世界のスパイもの。普通ならマスコット扱いになりそうなベアトリスを含め全員活躍できてるところが好き。丁寧な描写と要所でのダイナミックさが心地良く、2期を待ちたい。
ようこそ実力至上主義の教室へ
主人公の目的や行動原理を明かさないまま1クール終わってしまった。もっとも現時点で目標が明白なのは堀北だけかも知れない。こういうグループ間の抗争を描く作品には先の展開を確認せずにはいられない構造的な罠があって、作品として褒めるところはあまりないのについ見続けてしまう。作画は良い。
2017年秋 10~12月 宝石の国
宝石の国の原作漫画は淡白な絵作りをするタイプなのでこちらも淡々と読んでいたが、アニメになって動きと声が付いて、実は遥かに情感に訴える作品だということに気付けた。CGアニメはキャラクターが非人間的に見えやすいところが一つの壁になるが、この作品の主人公達は人間ではないという設定に助けられてる部分もちょっとある。
主人公達は性別がなく、直接触れると硬度の低い側が簡単に欠けてしまう間柄なので究極のプラトニックでもある。月人の侵略に立ち向かい共に戦う戦友である一方、食事を必用とせず環境次第で永遠に生きられるため生活態度は暢気な側面もある。しかし一番若いフォスが世界の有り様に疑問を持ち調べるうち、この世界に隠された残酷な仕組みが明らかになっていく。
宝石の擬人化と表現してしまうとただの一発ネタみたいなのに、個性の描写を丹念に重ねてそれぞれにファンが付くまで持って行く立派な仕事ぶり。修辞でない本当に独特の世界観も見事に表現されていて、秋クールで最も印象深い作品となった。今は2期を待ち望んでいる。