2018年冬期がもう終わりそうなので急いで書いていく。当初は感想を毎週書いていくつもりだったが意外と書き出すまで気力が要る。ともあれ、まずは今期一番の話題だったと言っていいであろうポプテピピック。
ポプテピピックの原作漫画はPPAPより前から連載していて、PPAPよりパ音が一つ多い。でもペンパイナッポーアッポーペンよりは一つ少ない。古典的な4コマ漫画で、原則として各回の継続性は無く4コマで完結する。共感を拒絶するような硬質のタッチでストーリーの一部だけを切り取ったようなコマを並べる一方で、流行りもの・ゲーム・フィクションあるあるを何のためらいもなく取り込む作風でもあり、表現手法はひねくれていても本質的には読者に視線を向けているように見える。
アニメ化は製作委員会方式ではなくキングレコード一社製作で、須藤孝太郎プロデューサーが企画の立ち上げから切り盛りした結果、仕掛け満載のリミックスのような作品に仕上がっている。まず神風動画に声がかかり、そこからの伝手でスペースネコカンパニーやAC部を巻き込んでいる。オープニングを始め音楽も本気の作りで「ギャグだから」みたいな逃げを感じさせない。他にも多大な労力が費やされただろうただ可愛いだけのフェルト人形のコマ撮りアニメを挟んだり、イケメンフランス人が作ったフランス人感覚のショート作品があったりと手が込んでいる。原作がミニマリズムを突き詰めたおにぎりならアニメは幕の内弁当のようだ。
異なるキャストで2回放送する方式は、主音声を女性・副音声を男性にするという大川ぶくぶが提供したアイディアが元になっている。主音声・副音声方式は現在のWeb放送で対応できないためそのままでは採用できなかったが、2回に分けて放送することは可能だし30分の枠を埋められる利点もある。映像的には15分だけなので制作費用を節約でき、おそらく2回分のキャストに報酬を支払ってお釣りが来るだろう。ポプ子・ピピ美ともに性別は女性でも性格は男勝りだったり男前だったりするので、しばしば男性声優のアフレコの方がしっくり来たりして面白い。
ベテランの遊び場と化したアフレコだがキャスト次第では実力差がはっきり出てしまう残酷なシステムでもある。若手や中堅くらいまでは上手くてもそれ以上ではなく、放映後はどんな演技だったか思い出せないことが多い。金田朋子・小林ゆうのけもフレコンビは個人的に出て欲しいと思っていた組み合わせだが、実際に放映されてみると小林ゆうの才能は役に入り込むことで発揮されるタイプで、アドリブについてはまだまだ経験不足な感じだった。
ベテランは過去の当たり役に寄せて台詞を変更するという鉄板ネタを使えるのが強みだがそれだけではなく、経験に裏打ちされた度胸の賜物だろう、自然かつ大胆にアドリブを入れてくる。ちなみにポプ子・ピピ美は基本的にもにゅ口(ω)のままなので、台詞がないシーンで勝手に喋っても違和感を生じないというアドリブ向きのデザインをしている。印象深いのが7話のこおろぎさとみで手でハートを作って「へへへぇ」と笑うところと、釣りのシーンで「ててててたっ」→「ぶくぶくぶく」→「昆布ついちゃった」のところ。いずれも画面に映る状況をそのまま自然に音声化してるのだけど、そのささやかな賑やかさと楽しさは後から思い返すと凄い仕事だと感じる。
玄田哲章も出て欲しいと思っていた声優で、期待通りのオカマ演技と強面演技を自在に操るだけである意味ずるいほど面白かった。あとはこういう企画に子安劇場は欠かせないので出るのは確定だと思ってるけど、相棒は誰になるだろう。
ポプテピピックの彩りとしてAC部の存在も欠かせない。原作のネタそのままにヘタウマな絵を被せただけだと思っていたら、7話のスーパー紙芝居『ヘルシェイク矢野』はほぼ全編オリジナルドラマでこれには降参するしかなかった。テンションは異様だが話の筋は困難を熱意で乗り越える王道パターン。外国人の反応動画を見るとヘルシェイクコールする人もいれば最後に拍手をする人もいたりと楽しんでもらえた様子で嬉しい。
記事を書きながらニコニコ動画の1話を見直したら、ひらがな一言だけの小学生としか思えないコメントに大半が入れ替わっていて気持ち悪くなった。世間へ浸透することの代償がこれならマイナーなままの方がましかも知れない。
ひっそりと何やかんや