スロウスタート

きらら系アニメはたぶん本来なら1話切りするジャンルだけど、購読しているきらら本誌やCaratで原作に目を通している作品なら、ニコニコ動画でコメント付きだと案外耐えられるし楽しめたりもする不思議。スロウスタートもその枠。
原作者の篤見唯子は年季の入ったローディストと聞いて、検索してみたら氏が表紙を描いたとされる1990年刊行の増刊マンガ・ファンロードVOL.14が出てきた。当時は高河ゆんリスペクトだったようだ。ところがそのほんの5年後、1995年のセーラームーンの同人誌では大きな丸い目を描いてるので、このあたりでとっくに萌え系へシフトしていた様子。
主人公の一之瀬花名は経歴に負い目があるせいで引っ込み思案な性格をしており、友達と交友する場面でも慌てたり受身の対応をすることが多い。作品としてはそれはさらりと流れるだけの場面であって決していじめではないけれど、ニコニコ動画だと花名に共感した視聴者から「やめてくれ」的なコメントがたくさん付くので、花名よりも視聴者の闇が垣間見えて面白い。
この作品には登場人物が結構な下ネタ発言をしてくる場面がちょくちょくある。多くの場合下ネタは読者を欲情させることを目的としていたり作者自身の欲情が伝わってくるものだが、この作品の下ネタは即物的であっけらかんとしており欲情に全く結びつかない。こういうのも作家性なのだろう。
メインキャスト4人は声音もテンションもそれぞれ違って聞き分けやすく、演技も達者。篤見唯子もアニメイトタイムズのインタビューで、今は自分の漫画からキャストの声が聞こえると語っている。きらら4月号掲載分を読んで、栄依子の「はーな」みたいな言い方はもしかしたらアニメのイメージから影響を受けてるのかと思った。以前からこういう言い方ならただの勘違い。